都会の片隅にいる野良子さんたち
門を入ると、もうすぐ閉門だというのに、人で賑わっています。いつも人も少ないこの広い浄真寺が好きなのに、いつの間にか人に知れて、混雑するのがあまり好きでは無いのです。
ねこがいると子ども達が騒いでいるので、ふと左側を見ると、木の根付近にねこがいた。あの水飲みねこがそこにいる。元気そうで何よりだなと思いながら見ていると、そのねこは境内の奥の方を見て、そしてこちらの僕を見た。
なにやら神妙な面持ち。どうしたのだろうか。ねこは立ち上がりこちらに来て、再びまた境内の奥の方を向いた。僕はその写真を撮って、まあ元気ならいいかと、僕は寺の本堂に向かう。
その時だった。前方を歩いていた老夫婦。右に曲がった瞬間。老婦人の方が突然に倒れた。
足が引っかかったように見えず、気を失ったのでは無いかと思い、僕は前方に駆けつける。
老夫婦の旦那の方は、呆然と立ったまま。こういう時、人は動けなくなってしまうことが多い。
これはいけないと、倒れた老婦人の方の状態を確認した。「大丈夫ですか?」と話しかけると、
「痛い、痛い。」と、頭をみると右側にひどいコブが出来ている。出血は無い。内部で出血があるやもしれず、救急車を呼びましょうといい、寺のガードマンに救急車の誘導をお願いした。
老婦人は目が見えるようになりました。タクシーで病院に行けば良いですと言う。いや、ここは救急車で病院へ行かれて下さいと。近所にある救急対応出来る病院を教えた。救急車の隊員の方へそう話すといいですと伝える。
ふと視線を横にやると、先程のねこがいる。何を心配したのか、この老夫婦の近くにきて、じっとしていた。
やがて救急車が来て、老婦人の救出が始まると、ねこはこちらを見て、去っていく。
今思うと、門をくぐったあたりで、そのねこは境内の奥を見て、これから起こる出来事に、僕に助けろと指示してきたようだった。
ねこは老婦人が助かることがわかるとその場を去っていったのだろう。
ねこの霊力を見た気がしています。